委員会活動
EC物流委員会成果発表会レポート~進化するAIが描く、EC物流の新しい未来。~
2026.09.11
2026年9月10日(木)、日本3PL協会は「EC物流委員会 成果発表会」を開催しました。
毎年多くの方にご参加いただいている本発表会ですが、これまで東京会場のみの開催だったため、西日本の会員様から「大阪でも参加したい」とのご要望を多数いただいておりました。
その声に応える形で、本年度より 東京会場と大阪会場をオンラインで接続した同時開催 とし、より多くの皆さまにご参加いただくことができました。

当日は、会員企業を中心に多数の参加者が来場し、EC物流の現場課題、AI活用の最新動向、そして未来のサプライチェーン像について、活発な議論が行われました。
今年度は 『進化するAIでEC物流の未来はどう変わるか』 をテーマに、3つのワーキンググループ(WG)が一年間の研究成果を発表しました。
開会にあたり、加藤専務理事よりご挨拶をいただき、その後、川村委員長(EC物流委員会)による基調講演として、今年度テーマ「進化するAIでEC物流の未来はどう変わるか」についてご講演いただきました。 続いて、各WGより一年間の活動の集大成となる成果発表が行われました。

■ 基調講演:川村勝宏 副会長(EC物流委員会 委員長)
川村委員長からは、EC市場の成長、労働力不足と2024年問題、サプライチェーンの自動化・DXの必然性、フィジカルAI・デジタルツインの台頭、AIが再構築するEC物流の未来像について、最新事例とともに解説がありました。
特に、「EC物流のDX成功の鍵は、データ連携とプロセス全体の最適化である」というメッセージが強調され、会場からも大きな反響がありました。

■ WG1|AIエージェントによる倉庫マネジメントの再構築
EC物流センターで深刻化する「管理職の労働時間不足」と「現場の多様化」、そしてEC特有の複雑な業務構造を背景に、センター長の役割そのものを再設計する必要性を示しました。
現在のセンター長は、13フェーズ・53業務に及ぶ煩雑なオペレーションを日々管理しながら、突発対応や人員配置、顧客対応まで幅広く担っています。
しかし、正社員の労働時間は年々減少し、短時間労働者や外国人スタッフが増える現場では、従来のマネジメント手法では限界が見え始めています。
そこでWG1が提案したのが「AIセンター長」という新しい概念です。
AIが大量データ処理、予測、報告書作成などの“守りの業務”を担い、人間のセンター長は顧客提案や経営判断といった“攻めの業務”に集中できる未来像を描きました。
勘と経験を言語化しAIに学習させることで、センター長が複数センターを統括できるような、持続可能なEC物流センターの姿を提示した点が大きな特徴です。

■WG2|AIでトレードオフを解消する次世代サプライチェーン
物流危機の本質は「人手不足」ではなく、サプライチェーン全体が最適化されていない構造にあると指摘しました。EC物流は少ロット・多品種・流通加工・急激な需要変動といった複雑性を抱えており、現場では依然として人の経験と勘による“人時計算”で対応しているため、部分最適が積み重なり、全体の非効率を生んでいます。
その背景には、企業間でデータを共有できないという構造的な制約があります。メーカー、EC事業者、倉庫、配送会社はそれぞれ重要なデータを保有していますが、機密性の高さから相互に開示できず、AIが全体を俯瞰するための情報が不足しているのが現状です。
WG2は、この課題を解決する鍵として 秘密計算AI を提示しました。秘密計算AIは、データを暗号化したまま計算できるため、企業は機密情報を開示することなく共同分析が可能になります。つまり「見せずに連携できる」環境が整うことで、初めてサプライチェーン全体のトレードオフを解消し、全体最適化が実現します。
発表では、動画を用いて現場の複雑性を可視化し、メーカーから倉庫、配送までを一気通貫で俯瞰することで、AIが全体最適化を実現する未来像を示しました。秘密計算AIによって企業間の壁が取り払われ、部分最適から全体最適へと進化する姿は、参加者から高い評価を得ました。
WG2が示したのは、単なる効率化ではなく、「データを守りながら、サプライチェーン全体を最適化する」という新しい物流の形」であり、AI時代のEC物流における本質的な変革ポイントと言えます。

■WG3|生活者の受取行動を変えるエモーショナルAI
配送側ではなく生活者側に焦点を当てた、これまでにないアプローチを展開しました。再配達は配送側の問題ではなく、生活者の行動・感情・生活リズムに根ざしているという前提から、受取行動そのものを変えるAIの必要性を示しました。
生活者を8つのペルソナに分類し、それぞれが抱える不安や行動特性に合わせてAIが寄り添い、在宅予測や受取方法の提案、家族連携、見守り支援などを行う仕組みを設計しました。 感情価値(安心・信頼・気軽さ)に働きかけることで受取行動が変わり、結果として再配達が減少し、配送効率が向上するという因果関係を明確に示した点が特徴です。
特に、再配達率が1ポイント改善するだけで「約5,800人分の配送余力」が生まれるという試算は、生活者起点のアプローチが社会全体に大きなインパクトをもたらすことを示す象徴的な結果となりました。

今年度の成果発表会では、 AIは物流を効率化するだけでなく、社会の仕組みを再設計する存在である という共通の方向性が示されました。
・倉庫マネジメントのAI化(WG1)
・サプライチェーン全体最適化(WG2)
・生活者の受取行動変容(WG3)
この3つは、EC物流の未来を形づくる重要な柱となります。
日本3PL協会 EC物流委員会は、来年度も引き続き、AI活用の実例研究・フィジカルAI・地域連携・中小企業向けDX など、会員企業の課題解決に直結するテーマを深掘りしてまいります。
(成果発表会発表資料はこちらから取得できます。)
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